カラフト犬の悲しい運命~子供の頃に見た映画「南極物語」と 本「その犬の名を誰も知らない」~

 第一次越冬隊のカラフト犬の世話係を務めた北村奏一氏の追憶の物語を読んだ。南極に置き去りにされ、生き残ったタロとジロと共に行動していたと言われる第三の犬が誰かを解き明かしていく内容である。

 既に見ている映画でも、リーダー犬のリキがタロとジロを助け、第二次越冬隊が来る直前に命を落とすように描かれていたような記憶がある。約40年近く前だからうろ覚えかもしれないが。なので、「第三の犬は?」と随分引っ張りすぎな感じを受けた。検証と言っても記憶の整理がメインなので、最終的な結論も、確実性の高い推測にすぎないという印象を受けた。

 それでもこの本には、当時の南極で、人間の都合で連れてこられたカラフト犬達が、いかにして身を削ってまで人間に忠実に従う姿が、生きいきと切実に描かれている。そして北村氏を含む越冬隊員達からもそれなりの愛情を受け、過酷な南極で互いに協力し合う様子も十分伺えた。それに映画では描かれなかった、タロとジロ以外の犬たちの遺体の捜索、回収、死因の推測、そして水葬に至るまで、動物が好きな人には耐えがたい悲しい情景が、北村氏の愛情と共に綴られていて涙で文字が霞んでしまった。それだけになぜ、ここまで愛情を持っている犬達を置き去りにしてしまうのかと、時代による価値観が背景にあるとはいえ、天候が悪く基地に近づけなくなったからと原因はわかっていても、やはり怒りがこみあげてきた。

 今もなお世界中では、人間が身勝手に動物の命を利用し続けている。文明の発達と共に私たちの価値観も成熟していかなければならないのに。